料理長ご挨拶

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ア 隆二 Ryuji Isozaki

経歴:
千葉県出身。湯河原「石亭」にて関根基定氏(現:湯河原「せきね」店主(ミシュラン掲載店))に師事。伊豆長岡「石亭」、銀座「浜作」を経て、平塚レイクウッドゴルフクラブ「湖畔亭」にて料理長となりその後、鎌倉「ライ亭」を経て現在、割烹沼津「ぼんどーる」にて料理長を務める。

料理への想い:
「昔から板前の世界は厳しいものと決まっています。味覚を満足させるだけの料理ならちょっとした工夫だけでも構いません。しかし、料理人の世界はそうはいきません。お客様、ひとり一人にこころがあり、出される料理はそうしたお客様のこころを満足させるものでなければならないのです。非常に難しいことでは有りますが、私は料理人の世界は一生修行だと思い、お客様に満足して頂けるように、精励恪勤して頑張ってまいります。」

 

美食礼賛 〜脈々と受け継がれ進化する旬の味〜

 

日本民族の総氏神である天照大御神に相応しい宮地を求め、倭姫命が伊勢を訪れたのは、偶然か、必然か。天照大御神とその食を司る豊受大御神は、山海の幸が豊富な伊勢を愛しました。海にも山にも恵まれた日本は、古来から食を大切にし、自然を愛しました。春夏秋冬を花鳥風月の心で涙する。

 

しかし、日本の食物事情や気候の変化などによって、自然と共にあるわたしたちの食は受け継がれつつも、更に進化しています。これは変化でなく、進化なのです。

 

鰻の蒲焼では「串打ち三年、割き八年、焼き一生」と言われるように、良い加減での焼きは難しく、この技量は長い修業によって得られるものととされています。伝統を守ることは、まず守り続け、その上で進化しなければなりません。

 

旬の味を最適に、最良に食すということは、日本人が培ってきた「伝統」なのでしょう。

 

 

 

身土不二のこころ 〜美食溢れる静岡県沼津の海と山の恵み〜

 

「身土不二」とは、「人と土は二つではなく一体であり、人の命と健康は食べ物で支えられ、食べ物は土が育てる。故に、人の命と健康はその土と共にある。」と言われています。

 

日本は食糧自給率は4割程度で、外国に食物に頼る一方で、私たち生活者の欲求は新しいトレンドを追い、飽きられたものはどんどん捨てられ、旬や食べ物作りの知恵の大切な食文化まで失っていく。身体と大地は一元一体であり、人も環境の産物で、暑い地域や季節には陰性の作物がとれ、逆に寒い地域や季節には陽性の作物がとれます。暮らす土地において旬の物を常食することで、身体は環境に調和すると言われています。

 

ぼんどーるのある静岡県沼津は、駿河湾の海の幸、山麓の多湿な気候からの山の幸といった恵みの宝庫です。その自然と共に生き、身体に取り入れること、まさに自然と共に生きることは、季節を大事にする日本の美しさのひとつかもしれません。

 

 

 

室礼と、おもてなし 〜静謐な空間と、おもてなしという和の素晴らしさ〜

 

『おもてなし=表無し=表裏なし=真意=真心』偽りのない心からの対応は心に響きます。

 

『室礼(しつらい)』は平安時代、ハレの儀式の日に、寝殿の母屋および廂に調度を立て、室内を装飾すること。現代では飾りや調度を正月、節分、雛祭、端午、重陽など、季節のその場にふさわしく整えるという意味。季節を心と体で感じる。
気温や湿度、雨や日差しで時間や季節の変化を身体で感じ、季節の移り変わりを五感で感じ取ることが出来ます。感性豊かな日本人はその季節の移りゆく様を感じ、『室礼』という空間に表現し固定しました。

 

『おもてなし』が他の人への表現であるなら、『室礼』は自分への表現なのかもしれません。日本人のきめ細やかさから生まれたたいせつな宝と言えます。